ハノンピアノ教本

ハノンピアノ教本とは

ハノンピアノ教本は、ピアノ演奏技術の習得に役立つ、古典的なピアノ教材。著者は、19世紀のフランスの作曲家シャルル=ルイ・アノン(Charles-Louis Hanon)。正式タイトルは、「60の練習曲によるヴィルトゥオーゾ・ピアニスト(Le Pianiste virtuose en 60 exercices)」。出版当時、各国で大反響を呼び、音楽学校の教授はみな称賛したと言われている。パリ音楽院でも、公式なテキストとして使用された。現在でも、少なくとも日本ではピアノ教則本のスタンダードであり、広く用いられている。

No.39は、音階の練習ですが、全ての調を10ページ以上に渡り練習するにも関わらず、練習番号はまとめて39番というのが不満でなりませんでした。ところが進んだらそんなのばかりたくさん出てくるようになり、何度、楽譜を破りそうになったことか…。

作曲家シャルル=ルイ・アノン(Charles-Louis Hanon)の詳しい説明は、次の記事を参照しよう。

ハノンピアノアルバムの特徴と目的

ハノンピアノ教本には、60のエクササイズが収録されており、ピアノ演奏の基礎となるテクニックを練習するための指南書となっている。それぞれのエクササイズは、指の柔軟性、独立性、強さ、速度などの向上を促し、ピアノ演奏における正確さを向上させることを目指している。

全音出版社の説明では、「バイエル後半頃より併用し、上級まで使うピアニスト必携の教本。たとえピアノ教師といえども指の独立性と平均性の錬磨のために欠くことのできない絶対必要の教本。」とあります。
…。ちょっと、怖い。

ハノンピアノ教本は、繰り返し練習することで指の筋力や運動能力を鍛えるため、打鍵技術の向上に効果的である。左右の手のバランスや対称性を養い、両手を均等に訓練することができるため、ピアノの奏法やテクニックを左右の手を統一的に向上させることができる。また、指の独立性や柔軟性を高めるためのトレーニングも含まれており、複雑な指の動きやコーディネーションを習得するのに役立つ。さらに、エクササイズの音楽的なパターンは、リズム感や音楽表現力を育てることにもつながる。

初心者から上級者まで、幅広いレベルのピアニストに適している。また、独学での使用だけでなく、ピアノ教師による指導や指導者によるグループレッスンでも活用されている。特に初級者にとっては、基礎的なピアノテクニックの習得に役立つ。ただし、練習の際には正しい姿勢や手の位置、音楽的な表現などにも注意を払う必要があり、適切な指導者の指導や指導書との組み合わせで使用することが推奨される。

ピアノ演奏技術の向上と共に、練習効率の向上や音楽的な表現力の発達を促す。長い間、ピアノ演奏の基礎を鍛えるための重要な教材として使われてきた。継続的な練習と忍耐力を持って取り組むことで、高い効果を実感できるだろう。ピアノを学び、上達したい人々にとって貴重な練習曲集であり、長年にわたって世界中のピアノ教育において重要な役割を果たしている。

ハノンピアノ教本の必要性

非常に無機質な音型を繰り返し練習するハノンピアノ教本に批判的である指導者もいるが、無意味であるとは言い切れない。まずは、対象としている人や目的によって、この教本の有効性は大きく違う。そもそも、プロを目指して、もしくはすでにプロのピアニストで、一日に4時間以上も練習ができるような環境に過ごしていれば、特にハノンのような機械的な動きを学ぶことなく、練習カリキュラムを組むことができるだろう。

しかし、趣味の方はどうだろう。仮に練習時間があったとしても、譜読みの力やレパートリーが少なく、譜読みばかりに時間が取られ、指を動きを確認するまでにたどり着かないかもしれない。演奏するまでに時間がかかるのに、表情を出す練習を行うのはいつなのだろうか。譜読みと同時に表情のことまで考える余裕などない人がほとんどだ。

そして、趣味でピアノを学んでいる人の中には、ピアノは好きだが、指が非常に硬く、動かすだけでも精一杯という方もいる。また、どうしても鍵盤の場所ばかりに気を取られ、鍵盤の距離感を意識できない、一つ一つの音を気にしてしまいフレーズ単位で意識することができない人がいる。

プロ(もしくはプロを目指す人)と趣味で楽しむ人たちの一番の違いは、ピアノを弾くときに必要な同時作業の質が大きい。楽譜を、数分で見て、曲を想像し、弾いているところをイメージし、音符やリズム、各種記号に気を付けながら弾き始め、一通り弾けば、足りないテクニックや難所をつかみ、練習のカリキュラムを組むことが、プロではできるかもしれないが、趣味の人たちでは難しい。

これらの問題を解決するためには、いろんな要素が絡み合う音楽作品を学ぶよりも、「指を動くようにする」というシンプルな目的の練習があるのは当然のことだ。そして、その練習内容はシンプルであればあるほどいい。

 ハノンピアノ教本は、以下のような人に適している。

  1. 練習時間が短い人
  2. ピアノ演奏での同時作業が苦手な人(鍵盤を見ないと弾けない、暗譜が苦手など)
  3. 指の動きが悪い人

対象レベル

利用方法によって異なるが、バイエル後半程度のレベルは必要。技術練習のテキストとして、最初から順に学習する場合は、中級レベルのため、ブルグミュラー、ツェルニーの30番~40番、ソナチネアルバム程度の方が活用しやすい。しかし、掲載されている練習曲が、多岐にわたる為、目的別や部分的な練習には、初心者から上級者まで活用できる。

活用方法

  1. テクニックの基本書として順番に最後までやりきる
  2. 重要なテクニックや苦手な部分のみ練習する
  3. 練習中の曲とハノンをリンクさせながら練習する

独学可能な教本か

上級者であれば問題ないが、まだフォームが安定していない、脱力ができていない初心者が一人で学ぶのは大変難しい。指導書や他のテクニック書物などを参考にしたとしても、微妙な動き、息遣い、感覚的なものを、またはその塩梅を判断するのは難しく、非常に長い時間とより高い忍耐力が必要になる。

指導者の下で学ぶのが一般的で、推奨できる。

教本の構成

大きく分けて、第一章から第三章までで分かれている。

学習方法のヒント

この手の課題を、問題なくこなしていける人は、どんどん進めればよい。目的を意識して練習に取り組もう。

僕自身が、あまりハノンに苦手意識とか嫌いとかっていう意識がなかったので、驚いたんですが、意外とハノンが嫌いな生徒が多いこと…。別に苦手そうでもなんでもない感じでハノンをやっていた生徒が提出したアンケートの嫌いな練習の質問に「両手で同じ動きを繰り返す練習」と書かれていて、やっぱ嫌いなんだと思ったものです。

この手の練習が苦手な方が多数いるので、苦手な人は、全てに手をつける必要はない。1番と2番だけをウォーミングアップとして、ずっと弾き続けてもいい。ここで、ポイントなのは、第一章の単純な運指練習とスケール、アルペジオ(これも一つの長調とその平行調だけでよい)をウォーミングアップして利用することだ。指導者は、どうしてもここでその生徒に必要な練習曲(だいたいが難易度の高いもの)を選んでしまうが、生徒が弾きやすいと感じるものでいい。指の動きの悪い生徒の大半は、練習不足とか経験不足とか、そういうこと以前に、打鍵する感覚を間違って覚えている可能性が高い。その場合は、完全に暗譜させて、負担なく弾けるようになった時点で、リズムやアクセントを変えながら、よりよいフォームを脱力を学んでいくといいだろう。

また、苦手な部分や必要な部分(練習しているピアノ作品で使うテクニックをさらに技術を高めたい場合など)を取り出して、練習するのも使い方の一つ。

ハノンの練習方法については下記の記事も参考にしよう。

https://www.pianowy.net/simple-and-effective-practice-methods-for-hanon/

重要なのは、<スケール、半音階、アルペジオ、トリル、重音トリル、オクターブ、トレモロ>

ハノンは、基礎練習として、第一章から第二章まで、単純な音型をただ繰り返す練習で、効果がないとは言わないが、指の動かし方の要領をつかんでいない人や非常に指が硬い人を除いては、あまりに単純な使い方過ぎて、練習の労力から見る効果が高いとはいえない。実際の作品の中では、当たり前に使われていてやらなくても自然と身に付くし、弾くのが難しい音型が出てくれば30-31番では対応できない場合が多い。左手の練習という考え方もあるが、そもそも左右を同じように動かす必要性は薄い。作品の中で出てくることは少ないし、出てきた場合はだいたいハノンの中にはない音型で、部分練習を繰り返す以外に方法がない。左手の動きはよくなるのではないかと思うかもしれないが、そうでもない。音楽作品の左手で31番までの音型が出てくることは稀であり、出てきたとしても、常に右と一緒に練習しているので、引っ張ってくれる右手がいなければ不安定になる。

トリルの練習には、急にモーツァルトはこの練習をしていた的なことが書かれていて、急に出てきた大作曲家にうさん臭さを感じつつ、「そうなんだ~」とテンションが上がるよ。それに続き、「タールベルクの指使い」なるものも出てきて、誰なんだと思いながらもすごい人なんだろうということでスルー。でも、リストの伝記を読んで、まさかの登場笑。いまだにこの練習してたの?って疑っています。

左右どちらの練習も重要であるが、一つ一つの独立が大切であれば、当然、左右も独立して動かす練習をしなければいけないのに、ハノンはシステム上、左右同じ動きをする。左手の動きをよくしたいのであれば、左手だけで練習する必要があるが、ハノンを左手だけで練習するなら、J.S.バッハの曲を弾いた方がいいのではないか。

ピアノは、左は伴奏として使うことが圧倒的に多い。右には右、左には左のよく出てくる音型があって、決して同じではない。決して、無駄とは言わないが、もっと効果的な方法があるのではなかろうか。

ところが、スケール、半音階、アルペジオ、トリル、重音トリル、オクターブ、トレモロなどは、左右関係なくよく出てくるので、徹底的に学びたい。しかし、31番までにあまりに労力を使いすぎて、重要な項目を練習すらしていないのはもったいないことだ。

ユニゾンで行う両手練習の効果は薄いと説明したが、上記のテクニックは別だ。なぜなら、両手の動きもよく出てくるからである。しかも、大曲と言われる作品には、必ずと言っていいほど、これらのテクニックを活用したフレーズが現れる。この項目については、片手ずつでも両手でも徹底的に練習したいところだが、その前に息切れしてしまうのは、もったいないことだ。

この練習は、実はテクニック的なことだけでなく、譜読みにもとても意味のあるものだ。予測がうまくなり、誤読によるミスも、技術不足によるミスも減る。作品に臨んだ時の負担に感じる部分が軽減されることは間違いない。

日本のハノン関連の初心者向け教本では、1-20までを重点的に解説するものが多く、スケールなどがおまけ程度になっていることはとても残念なことだ。

リズムが取れない人は活用すべき

ハノンといえば、リズムを変えて練習するが、これでリズム感がよくなるケースが多い。なぜなら、太鼓のようにずっと同じリズムパターンを繰り返すため、苦手に思っていたリズムが自然とできるようになる。とくに付点のリズムは、苦手意識がなくなるようだ。

ハノンの練習方法

ハノンの練習方法は、工夫次第で無限に広がる。また、市販の教本には、ハノン自身が解説しているものや音楽之友社発行のものなどは、専門家による詳しい解説や活用例が示されているので活用する良い。基本的には、単純な音型の繰り返しのため、リズムを変える、アクセントを変える、強弱をつける、調を変えるなどが中心だが、全部こなしていたら、時間がかかり、それに見合う結果がついてくるのかは疑問があるので、やり過ぎに注意が必要。

たくさんの譜例があるが、付点とスタッカートだけで基本問題ない。苦手なパターンがあれば、それをやればいい。

生徒には、「指だけ高速に動く人になってなんか意味あるの?曲は弾けないだけど指は高速に動きますって言われても周り反応困ると思うよ」「何か曲弾いて?と言われて、ハノンを高速で弾いたところで周りは引くと思うよ」と、ハノンを弾きこなすことを目標としないようよく注意します。

音楽之友社のハノンは、解説がわかりやすくてとても参考になります。たまたまボロボロになったハノンを買いなおした際に購入したが、なかなかの衝撃でした。解説がいいからと言って、速習できるわけではないですが笑。

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